滋賀県甲賀市の信楽で古くから作られてきた陶器が信楽焼です。信楽には多くの窯があり、工房を構える陶芸作家さんもたくさんいます。
作品の個性は作家さんによって様々で、作られている陶器もバリエーションがあるのが楽しみの一つです。日常使う食器類はもちろんですが、芸術性あふれる作品としての陶器が見つかるのが信楽の魅力です。
ここでは信楽在住の作家さんの活動などをまとめてみました。
色々な作家さんの作品に触れたり、特定の作家さんに注目したりと、作家さんを通して信楽焼の魅力を発見するもの楽しそうですね。
信楽の陶芸作家さんについて
信楽焼は、作り手の個性が現れやすい焼き物です。飲食店のエントランスなどでよく見かける徳利を持った狸の置物なども、信楽焼のバリエーションの1つと言えます。
信楽の陶芸作家さんが作る作品は、ただの器の域を超えた存在感を放つのが特徴です。豆皿やぐい吞み、蕎麦猪口などの小さな器もそれぞれ味わい深い風合いに仕上がっており、美しく上質な雰囲気を食卓にもたらしてくれる作品が多く見られます。
炎で焼いたときの信楽焼の色合いや、手になじむような素朴な手触りなどは、茶道の侘びさびの世界に通じるような魅力にあふれています。
信楽焼の作品は、陶芸作家さんの個展などでもしばしば紹介されていて、全国のギャラリーやショップでは、信楽焼の作家さんを紹介する展覧会や即売会などのイベントもたびたび開催されています。
お気に入りのアイテムなどを見つけたいときは、機会を見てイベントに足を運んでみると良いかもしれませんね。
以下では、信楽で活躍されている陶芸作家さんをご紹介したいと思います。
藤原純(古仙堂)
藤原純さんは古仙堂という窯元で陶芸をされています。古仙堂は、信楽高原鐵道の信楽駅から車で約10分の場所にあります。工房は駅から少し離れていますが、歩いて約4分のところに信楽高原バスの停留所があります。バスを使えば、工房までのアクセスも比較的スムーズです。
藤原純さんの作品は、土の流れをイメージしたダイナミックさがファンからも注目されています。
信楽の藤原純くんとこへ。 pic.twitter.com/3O2NvYKxo9
— K (@jnstctn) October 8, 2018
古仙堂を運営する藤原純さんは1979年信楽町生まれで、1999年に信楽窯業技術試験場大物ロクロ成形科を修了し、曾祖父から続いた製陶所の4代目です。
陶器、作品の特徴 | 土の流れを表現した器やオブジェを制作。藤原ブルーと言われる鮮やかなブルーの焼き物が特徴。 |
歴史や活動経歴等 | 2000年から全国各地で個展やグループ展を開催。 |
作家さんのHP、Instagram | https://www.instagram.com/jin0815/ |
カエルなどの動物や仏、阿吽をデザインしたオブジェなどは、ユニークな藤原純さんの個性が感じられる作品です。
帰省途中に信楽の藤原純くんの工房に寄る。カエルが窯に。最近は陶器がとてもカッコよくて使い易い。 pic.twitter.com/DyZCiUTvqk
— 入江英樹 (@iriephoto) December 29, 2016
他の作家が制作しているシンプルな信楽焼の作品と少し雰囲気が異なるものも多く、子どもから大人までお気に入りが見つかるかもしれません。オブジェの表情の豊かさや生き生きとした躍動感などは、藤原純さんの作品ならではの魅力と言えるでしょう。Instagramに多数作品を掲載しているので見てみてください。
村上 直子(器のしごと)
信楽町の市街地から国道307号を通り滋賀県立陶芸の森を過ぎて少し先に行くと、村上直子さんのショップである「器のしごと」があります。「器のしごと」は、小さな雑貨や食器などを主に扱うショップです。
市営地下鉄のフリーペーパーで一目惚れした器を求めて、カタルテさんに行ってきました。信楽焼作家、村上直子さんの作品です。とっても可愛い。冬の青春十八きっぷの行先の一つは、信楽に行くことにします。 pic.twitter.com/w67Bvvpoxv
— hache (@hachih88) November 16, 2019
村上直子さんは1998年に信楽窯業技術試験場小物ロクロ科を修了。その後、2007年に信楽町にショップの「器のしごと」を開きます。
陶器、作品の特徴 | 土の風合いを生かし、白や黒、ベージュでまとめたシンプルなデザインの器を制作。 |
歴史や活動経歴等 | 2008年、2009年に「東京くらしを彩る器展コーディネート部門」で賞を受賞。2010年に恵比寿三越で個展を開催。 |
作家さんのHP、Instagram | https://www.instagram.com/utsuwa_no_shigoto/ |
村上直子さんの作品は、白や黒、ベージュといったベーシックなカラーをメインに用いるのが特徴になっており、女性の作家らしい繊細な雰囲気があるところが人気を得ています。素朴でありながらも現代の食卓やインテリアにマッチするようなモダンなデザインは、村上直子さんの作品ならではの魅力です。ヨーロピアンテイストを感じさせるオシャレな雰囲気も、人気の一因になっています。
古谷 浩一(古谷製陶所)
古谷浩一さんが制作活動をしている古谷製陶所は信楽駅からやや離れた場所にありますが、車を使えば約8分で到着します。古谷浩一さんは、粉引きと呼ばれる信楽焼の製法で名を上げた古谷信男氏の長男として古谷製陶所を継ぎ、制作活動を行なっています。
古谷製陶所は信楽の中心部から車で数分走った場所にひっそりあった。小さなショールームは友達のお家のような心地よさで、靴を脱いでゆっくりお皿を選べる。どの器も素敵でかなり長居してしまった… pic.twitter.com/JgqPH8Kgai
— moimoi (@muimui007) November 24, 2019
古谷浩一さんは1979年信楽町生まれ。2003年に信楽窯業技術試験場釉薬科を修了し、翌2004年には京都府立陶工高等専門学を修了しています。
陶器、作品の特徴 | 土の風合いを生かした白い器を数多く制作。 |
歴史や活動経歴等 | 2004年から古谷製陶所で制作を開始。2015年にアートスペース油亀で個展を開催。 |
作家さんのHP、Instagram | http://kohiki-furutani.com/ |
古谷浩一さんが制作した作品には、古谷信男氏のスタイルを受け継いだ、白をテーマにしたものが多いのが特徴です。スタイリッシュなデザインはファンからも人気を得ています。スープやサラダ、肉料理などの洋風の料理にも合わせやすいシンプルで温かみのあるデザインは、他の作家の作品と一線を画すのが古谷浩一作品の魅力です。
昨日買った器など。すべて古谷製陶所のもの。信楽焼ってたぬきの置物とか、おばあちゃん家のお皿とか、そんなイメージしかなかったのだけど、普段使いできる今様のシンプルな器もあることを恥ずかしながら初めて知れて、それが一番の収穫でもあった。 pic.twitter.com/YEiMk1GNVe
— moimoi (@muimui007) November 24, 2019
古谷浩一さんの作品は、本焼きのプロセスを2回おこなう作風で知られています。本焼きを繰り返すと水分への強度がアップして、汚れにくくなります。
奥田 章(文五郎窯)
奥田章さんは文五郎窯で陶芸をされています。文五郎窯は、江戸時代から続く歴史ある窯元で、JR信楽駅から近く工房までは歩いて約10分の距離にあります。白と黒を基調にしたシンプルでモダンなデザインが、奥田章さんの作品のスタイルです。
大好きな文五郎窯 pic.twitter.com/Xa93CUpr7K
— シゲ (@CR1272nd) September 14, 2019
文五郎窯で制作活動をしている奥田章さんは1972年信楽町で生まれ。1862年に初代奥田文五郎が開いた窯で兄である5代目の奥田文吾さんとともに制作活動に取り組んでいます。
陶器、作品の特徴 | 白と黒をベースにした器(十草シリーズ)などを制作。 |
歴史や活動経歴等 | 2004年に信楽焼総合展で優秀賞を受賞。2010年に日本橋高島屋で個展を開催。2007年からは京都造形大学などで非常勤講師も務めています。 |
作家さんのHP、Instagram | http://bungoro.com/ |
奥田章さんの作品の温かみがありながらも従来の焼き物のイメージを覆すような少しクールなデザインは、若い世代のファンからも人気があります。
今日の「昼めし旅 」(テレビ東京)はやしろ優が「スカーレット」の舞台である信楽を訪ね、「文五郎窯」の御主人の焼いた焼き物に盛られた御主人手作りの料理を御馳走になっていた
私も食事する時には食器には拘泥(こだわ)る方なのだが、御主人が焼かれた両面皿は手に入れたいと思った#昼めし旅 #信楽 pic.twitter.com/HW10Vhfbmk
— 大貫虎吉 (@tora__1947) December 13, 2019
裏返すと別のデザインが楽しめるリバーシブルの皿などは特に有名です。白黒のリバーシブルの皿は、奥田章さんのオリジナルのセンスが感じられるユニークな作品として、展覧会でも注目されています。実用性や遊び心を意識しているところが、奥田章作品の魅力になっています。
安見 麻紀・安見 勇人(安見工房)
安見 麻紀さん・安見 勇人さんが運営するのが、安見工房です。安見工房が制作する作品は、粉引きの白い素材をベースに、花やフルーツ、きのこなどの様々なデザインの絵付けをしているのが特徴です。
安見工房のマグカップかわいいなあ pic.twitter.com/wEvy6KgmVA
— なも。 (@okota__nukunuku) January 22, 2018
安見 麻紀さんは1969年大阪府大阪市生まれ。大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コースを卒業後、1994年から信楽町に移りました。安見勇人さんは1968年鳥取県米子市生まれ。同志社大学法学部を卒業。1994年滋賀県立信楽窯業試験場修了後、信楽町や備前で修行をしています。
陶器、作品の特徴 | 水墨画のような繊細なデザインを施した粉引きの白い器を制作。 |
歴史や活動経歴等 | 2015年に「アートサロンくら」で「安見 麻紀・安見 勇人陶展」を開催。 |
作家さんのHP、Instagram | https://www.instagram.com/yasumikoubou/ |
安見工房が制作する作品の特徴である絵付けと白い素材の境目がにじむ様子は「水墨画のよう」と評判を得ています。見ているだけで楽しくなるようなオシャレなデザインの皿やマグカップなどは、食卓を明るく彩ってくれると女性からも人気です。陶器の器を彷彿させるような軽やかで優しい器の雰囲気は、安見 麻紀さん・安見 勇人さんの作品ならではの独特の魅力です。
陶芸作家さんの作品を手に入れるには
ここで紹介した方をはじめ陶芸作家さんの作品は、ネットショップや陶器市などで手に入ります。
焼き物を販売するネットショップの中には、信楽焼の陶芸作家さんの作品が一通りそろっていたりします。ネットショップの場合は商品の写真が1点ずつ紹介されているケースが多いため、1つひとつ画像を確認しながら選べるのも楽しいです。
一方、実物を見て買いたいときは、信楽町で開催されている陶器市やギャラリーなどに行ってみると良いかもしれません。信楽町では、「春の信楽駅前陶器市」や「信楽作家市」、「信楽セラミックアートマーケット」、「信楽陶器まつり」の4つの陶器市が毎年開催されます。旅行の際などに足を運んでみると、いろいろな作品と出会えるでしょう。
陶器市は、一度にたくさんの陶芸作家さんの作品に触れられるのが魅力です。陶器市のようなマーケットは、散歩がてら気軽に見て回れるところも嬉しいですね。
作家さんの個性で表情も変わる信楽焼
今回ご覧いただいたように、信楽焼は個性豊かな陶芸作家さんがたくさんいらっしゃいます。同じ信楽焼でも、作り手によって表情は変わりますので、ぜひ特徴や作風などを見比べながら、お気に入りの作品を見つけてみてください。
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